「勇気ってなんだろう」(江川紹子)

勇気を持って人生を切り拓いた人たち

「勇気ってなんだろう」(江川紹子)
 岩波ジュニア新書

大人になるための条件とは?という
問いに対しての一つの解答は、
「勇気を持つこと」なのではないかと
思うことがよくあります。
では、その「勇気」とは何か?
その問いかけに答えてくれるのが
本書です。

本書には勇気を持って人生を切り拓いた
6人(組)の姿が描かれています。
①冒険家・野口健さん、
②福祉活動家・山本譲司さん、
③北朝鮮拉致被害者の実兄・蓮池透さん、
④警察官・仙波敏郎さん、
⑤ボランティア活動家・高遠菜穂子さん、
そして
⑥イスラエルの人々。

①②は、自分と向き合うことの大切さ、
③⑥は、柔軟な考え方、
多角的複眼的な思考の大切さ、
④⑤は、自分の生き方に
信念を持つことの大切さを
教えてくれます。
私が何度も読み返しているのは
②と④です。
読むたびに「勇気」をもらっています。

山本譲司さんは元衆議院議員です。
十数年前問題になった、
秘書給与流用問題で罪を問われた
政治家の一人です。
なぜか彼だけが実刑判決を受けて
服役していました。
その当時から私は注目していました。

彼は刑務所内で障碍を持つ
受刑者の世話を担当します。
その経験を生かし、服役後は
介護福祉士として活躍しました。
そして同時に社会の歪みを
積極的に世の中に訴えます。
自分の過ちを素直に認め、
そこから再出発し、
自信を持って生きる姿。
これこそが「勇気」です。

仙波敏郎さんは、(これも十数年前
話題になりましたが)警察の裏金問題を、
実名で内部告発した方です。
警察内部での陰湿ないじめは当時
新聞等で読んだ記憶がありましたが、
よもやこれほどとは思いませんでした。

そんな逆境の中でも
定年退職まで警察官を続けたのです。
自分が正しいと信じたことを、
どこまでも貫き通す姿勢。
これこそが「勇気」です。

昨今、子どもたちの周囲に、
生き方のモデルになるべき大人が
いないということがよく言われます
(私もしっかりしなければと
いつも思うのですが)。
本書を読んだ子どもたちが、
本当の大人の在り方って
こういうことなんだ、と
感じてくれることを願います。

いやいや、
本に頼っていてはいけません。
私たち大人が「勇気」を持って、
しっかりと生き方の範を
子どもたちに示していきましょう。

※参考までに、各章の小見出しを。
1 自分に正直に・野口健さん
2 過ちと向き合って・山本譲司さん
3 柔軟に考える・蓮池透さん
4 信念をつらぬく・仙波敏郎さん
5 「命」にこだわって・高遠菜穂子さん
6 暴力を止める声・イスラエルの人びと

(2019.12.5)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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